遊び込み育ち合うために必要な遊びの足跡

前回の続きです。

雨の日の遊びをきっかけとして遊びが発展した様子を園庭を担当していた保育者の記録から振り返りたいと思います。

 

ダム作りをしている年長組です。

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二つの水たまりをつなげて水を作りましたが、水が逆流してしまいます。

写真手前がダムです。

「水が戻るってことは坂になるってことじゃない?」と言う気づきから

「土を掘って坂を反対にしよう。」水路内の高低差を逆にしていきました。

土を掘っては様子を見る作業を繰り返し微調整していきます。

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高低差が逆になり水が流れ込みました。

 

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その後、流れを利用して色々な道を作り水路(子ども達は迷路と呼んでいました。)

を作っていきました。

 

そして次の日水曜日も迷路作りが続きます。もう水たまりはありませんでしたが、水をタンクに入れて流しています。

一度ほった堀を壁作りに再利用しながら、作っていき、堀が深くより水路のようになっています。

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そして橋をつくろうと言う一言で橋作りに発展しました。

板を置くだけでなく段差をなくすために泥をかけて、かけた泥を小さいスコップで慣らしていきます。

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「レンガにしたら強くなるね」と泥の中に小石を混ぜています。f:id:aisen-k:20191118144020j:plain





金曜日は木曜日に沢山降った雨の影響で水が水路に沢山入っていました。

水路から水が溢れていた為新しく水路を作ったり、水路の深さを調節しながら、水を流していきます。

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「迷路に水があると工事がしにくいから一度水を止めよう」

と水路に水留めを作り始め、様々な場所に水留めができていきます。

「ダムの方が低いから水が流れるんだ。」

「水の上の泡を見ると、水の動きがわかるね」と

考えたことや発見したこと友達同士で伝え合っています。

 

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こうして金曜日最後に出来上がったダムと迷路です。水路を作ると言うより、「迷路を作る」と言う方がワクワクしますね。

 

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この実践の記録を見ると子ども達の遊びのスケールの大きさに感動しました。

自然の恵みに魅了され、主体的に働きかけていくうちに、探究心が湧き出てきました。そしてどうしたら良いか思い巡らせ思考力を働かせています。

そして自分たちの気づいたことを伝え合いながら友達と一緒により良いものにしていくことの充実感も得られるでしょう。この実践には様々な学びがあります。

 

最後に伝えたいのは自然は多彩で折々に変化しますが、その自然との関わりを深めるためには、今までそこで何をしてきたのかと言う遊びの文化が必要と言うことです。

今回は偶然の中にも必然性がありました。

例えば今回のダムになった大きな水たまりの部分、そこは去年ビオトープ 作りをした年長さんの穴をあまり埋めずに残しておいた所です。

そして水路は、適度に柔らかく、そして崩れにくく、水が他の場所と比べてよくたまる山土で、これまでも遊びの中で色々な水路が出来上がっていました。

 

水路を作ったり大きな穴をほって水をためたりする等、これまで遊んできた子ども達の足跡が形を変えて遊び込む姿が生まれたのです。

鉄製のスコップを使いこなしていたことや、水の流れについての物理的な法則の気づき、塀の壁を硬くするための自分なりの工夫などもこれまでの経験と繋がっています。

今回の遊びの広がりと育ち合いはそれまでこの場所で繰り返されてきた沢山の遊びの歴史に支えられています。

 

この空間が持つ特性と熱心に遊ぶ年長組と様々な道具への憧れを持ちながら、またいつかここで新しい迫力のある遊びのが生まれるでしょう。